誤解
四枚の翼を羽ばたかせ、は上空からレイとシンを探していた。確かに説明もなしにあの状況を見せられたのだから二人が怒るのも無理はない。
「私は馬鹿ですね・・・・」
は溜息をつく。ふと、大きな木の陰にシヴァがいるのに気がついた。
「シヴァ」
「・・・・どうしたの?」
「レイとシンを見ませんでしたか」
「二人ならさっき湖のほうへむかったよ」
「ありがとうございます」
「あっ」
羽ばたこうとしていたをシヴァが引き止める。
はシヴァのほうを振り返った。
「腰、大丈夫?」
「・・・・・・はい」
しばらく呆けたような顔をした表情だったが、すぐに微笑んでうなずいた。
シヴァはホッとした様子である。は湖のほうへむかって一直線に飛び立っていった。
空を翔けながらは何故シヴァは知っていたのだろうか、と首をかしげる。
湖にたどり着き、そのほとりに二人がいるのをみとめたは下降する。
「シン、レイ」
「・・・・何をしに来たんですか?」
「っ・・・・・あの」
着地すると同時にふらついたの体を背後からの腕が支えた。
顔をあげれば青と赤のオッドアイと目が合う。
「大丈夫か、」
「はい。すみません、ゴウ」
はしっかりとたちなおすと二人を見た。
「あれは誤解です」
「なにがです」
「だから・・その」
は頬を染めて視線を外した。ゴウが代わりにに何があったかを話す。
話し終えた頃ユダとルカも来た。
「とは波長があうらしくてな、手でゆっくりと気を流し込んでいたんだ」
「そういうわけです・・・・・すみません、あられもない声を出してしまって・・・・」
は真っ赤になって頭をさげた。
シンとレイは顔を見合わせて困ったような顔になる。
「・・・・・私たちも誤解してましたし、どうやら誤解されてもいたようですね」
「えっ」
シンの言葉には顔をあげてきょとんとした。
シンがそっとの手に乳白色の液が入ったビンを置いた。
「痛みによく効く薬です。のために作ったんです」
「私のために・・・?」
「はい」
はふと少し厳しい顔になってシンとレイを見た。
「二人とも・・・・手を見せてください」
「えっ・・・」
は背中に隠されようとした二人の手をつかむとじっと見て、渋い顔を背後にむけた。
はそのままレイやシンを見た。
「これが私の知っているクスリであれば、必ず毒物が入っているはずです。えぇ、もちろん他の薬草とともに入ってしまえば毒は中和してしまいます。でも・・・」
は二人の手に目を落とした。
あかぎれがひどく、青紫にはれ上がっている部分もある。
「・・・・ひどい傷です・・・・・私のためにここまでなる必要なないんです。シンはハープがしばらく弾けないし、レイは料理が作れないじゃないですか」
は泣きそうな顔である。
「ユダ、これは癒しの力で治してはいけませんよ。絶対にです」
「何故だ?」
「体に入ってしまえばひどい苦痛に襲われてしまいます。待っていてください。すぐに解毒薬を持ってきますから」
は翼を広げると家にむかって真っ直ぐに飛んでいく。
数々のクスリが並ぶ棚から目的のものを二つ取り出すとまた湖にむかっていった。
「・・・・」
「手を出してください。少し沁みますが我慢してくださいね」
はビンから取り出した緑色の液を二人の手にそれぞれ塗りつけていく。
「ぁっ・・・・・」
「時間が経ってしまっているので強いものでなければ毒は抜けません。もう少しで痛みは引くと思いますから・・・・・」
はそう言うと二人の顔を見た。
「誤解をさせてしまってすみません。でも私が心に想う方はただ一人だけ・・・ユダとルカに対してそういう思いはないのです。だから」
「大丈夫ですよ、」
「私たちのほうこそすみません。あなたに辛い思いをさせてしまったかもしれませんね」
は涙を堪えて首を振った。
その背後ではユダやルカ、ガイにゴウがホッとしたような表情で立っていたのであった。