河の流れのように
「ッ、どこにいるんです!」「おや・・・」
ユウラとラキは滅多にない神官長の大声に顔を見合わせた。パンドラがこちらにやってくる。
「ユウラ様、を見ませんでしたか」
「朝から見てませんよ」
「そうですか。ラキ殿は」
「俺も見てない」
パンドラは二人に小さく一礼するとの名を呼びながら神殿にむかった。
「はの名が示すとおり、しょっちゅういなくなりますね」
「あぁ」
ふとユウラは神殿近くの泉へと歩み寄っていく天使の姿を見た。
その天使は水を飲もうとしているのか、泉のほとりに近づき・・・落ちた。
「ですね」
「あぁ」
がが泉に落ちたのを見た二人は助けに行こうとせず、パンドラの姿を探した。偶然にもパンドラはが泉に落ちるところを見ていたらしい。走っていくのが見えた。
パンドラはが泉に落ちたのをみると 慌てて泉に走りよった。
あまり深くはないが、のことである。水につかりすぎて風邪を引いてしまう。
「、はやく私の手につかまりなさい」
「パンドラ・・・・」
「風邪を引いてしまうでしょう」
「うん」
はパンドラの手をつかむと泉から這い出した。
ぽたぽたと髪から水が滴る。色っぽいことこの上ないが、このままではまずい。
は小さなくしゃみをした。パンドラは言わんこっちゃないとの肩に、羽織っていたローブをかける。
「パンドラ・・・濡れるよ」
「あなたに風邪をひかれるのも困りますから」
「・・なんで姿を消したのか聞かないんだね」
「聞いたところでどうしまう。あなたのそれは生来のものです。それに今回のことは自業自得でしょ」
はきょとんとしてパンドラを見た。普段はかなりの鋭さと口の悪さで乗り越えていくの元気がないと、こちらも気落ちしてくる。
「たてますか、」
「うん」
はよろよろと立ち上がった。パンドラはそれを脇から支える。
パンドラはを支えながら溜息をつく。
「アン、いまだから言いますが、私はたとえあなたがどこに流れていっても見つけ出しますよ」
「本当?」
は小さく首をかしげてそう問い返した。パンドラは当たり前です、とうなずく。
は嬉しそうな笑みを見せた。
「あなたは私の大切な人ですからね」
「うん。パンドラも大切な人だよ」
中睦まじい神官たちにユウラとラキは苦笑をもらした。
「パンドラは見事に河を行く小さな羽を手に入れたようですね」
「あぁ」
二人は小さな笑声を出すとに飛びつかれているパンドラを微笑ましそうに見たのであった。