セイント学園物語 月曜 4時限目 【英語R】
「英語かぁ」
「いいじゃないですか。私は好きですよ、英語」
「そりゃは万能だから」
「関係ありません」

は手に持つ辞書をの頭に落とした。机に突っ伏して居眠りしていたは変な声をあげて起きる。
は溜息をついてを見た。

「もうすぐ期末ですよ。今回も範囲が広いのだからちゃんとやらないと」
「それってガイにも当てはまるだろ」
「補習常習者が何寝ぼけたことを」
「ひでぇ」

はそういいつつもノートを取り出す。なんだかんだ言ってはまじめに勉強するのである。
マジメにやっていて何故赤点なのか、不思議ではあるが。
たいていたらたらな授業ではクラスの大半が眠るものである。
マジメなシン、レイ、ルカ、ユダ、を除いてたいていが眠りかけているか寝ている。も意識を落としそうになっていた。
英文を読み上げていくゼウスの声が遠くに消えていく。が、突如として足に走った鋭い痛みに意識は引き戻される。
見れば目に座るが器用なことにのむこうずねを蹴り飛ばしていた。

、お前は頭の後ろに目があるのか」
「あるわけないでしょう」

二人は小声でこそことする。

「あなたが眠りそうになっていることなどすぐにわかりますから、蹴らせてもらいました」
「はいはい、足の長い人は得しますね」
「関係ないでしょう」

少しずつ二人のやり取りはヒートアップしていく。大声を張り上げているゼウスには届かないようだ。
周りにいる者達はいつ二人が声を張り上げるかとひやひやしていた。が、予想に反して二人のやり取りは終った。

、次の章から止めるまで朗読してみろ」
「ほーい」

は本片手に立ち上がる。今日の話は「Snow White」。何故かはゼウスに聞かなければ分からない。
というか何故高校で白雪姫を読まなければいけないのかわからない。しかも英語の授業で。
ためになるのか疑問だ。
は淡々と物語を読み勧めていく。ちなみにこの場面、白雪姫が継母に焼いた鉄靴を履かせるというところだ。子供用に改善されたものではないらしい。
いいのか。しかもが淡々と読んでいくため、怖さが倍増していく。

「もういい」

最後まで読ませるつもりだったゼウスだが、さすがに途中でとめた。

「もう少し感情というものを入れればいいのに」

が読むのをやめ、席に着くとが小さくつぶやいた。
それはそれで恐ろしくはないのか、と誰しもが想った。あんなにグロテスクな場面に抑揚をつけるなどたまったものではない。

「ここの部分は出すからな。覚悟しておけよ」

授業終わりのチャイムがなる。ゼウスのいなくなった教室で欠伸が断続的に起きた。
が呆れたような顔で彼らを見た。

「呆れた。何故授業中に寝られるのでしょう」
「神経が図太いから」
「だろうな」
、歯がゆいのはわかるが、そんなふうに不満そうな顔をするな。綺麗な顔が台無しだぞ」

ルカに言われ、とりあえずは不満を抑える。
は苦笑しながら隣で眠り続けるガイを起こした。

「あっ・・・・もう授業終わり?」
「とっくに」

ガイのノートは真っ白だ。

「次は現文だっけ」
「古典に変わったでしょう」

呆れたようなの肩をユダとルカが慰めるように軽く叩いたのであった。