空の旅
「」ルカは窓辺で本を読んでいた天使に声をかけた。
すぐ金色の瞳がルカをむいた。
「どうしたの?」
「空を飛ばないか」
「空・・・・・うん、いいかもしれないね」
のはその名の通り藍色の翼を持つ。
翼を持ち、なおかつ飛ぶことができる天使は稀だ。ちなみに神官長と天使長と兼任するユウラ、女神親衛隊副隊長ラキの二人は例外としてのぞく。
も飛ぶことができるが、長時間は難しい。としては長時間飛びたいため、ルカに付き合ってもらって長い間飛ぶ練習をしているのだ。
「どこに行こう」
「の好きなところでかまわない」
「じゃぁ、東の泉だ。あそこが一番綺麗だから」
「そうするか」
二人は翼を広げ空を翔けていく。
はルカの白銀の翼に見惚れた。ルカの翼は大きく、そして美しいのだ。
彼らの上に位置するユウラが持つ翼も美しい。しかも六対、全部で十二枚もあるのだ。
比べるほうが馬鹿である。
「風が気持ちいいな、」
「うん」
は笑顔を浮かべてうなずいた。珍しく遠くまで飛んでいる。
ルカがそばに寄ってきての手を握った。は赤くなる。
「そろそろ落ちるぞ?」
「まだ落ちない・・・・・たぶん」
「多分じゃないか」
ルカは小さく笑った。はいいものを見たと嬉しくなる。
が、がくんと体が揺れるとはびくっとした。
「わっ・・・・」
「ッ!」
落ちかけたの体をルカが支える。
しっかりとした腕の感触にはほっとした。
ルカはふぅっと息をついた。
「言わんこっちゃないだろう」
「ごめん」
腕の中でうなだれるにルカは唇を落とした。
「しょげるな」
「無理だよ。せっかくルカと一緒に空を飛べると思っていたのに・・・・」
「一緒に飛びたいのか」
は小さくうなずいた。ルカは口元に柔らかな笑みを浮かべる。
「翼をしまえ、」
「ん?なんで」
「いいから」
は首を傾げつつも言われたとおりに翼をしまう。ルカはを抱きなおし、翼を大きく羽ばたかせた。
ルカと彼に抱かれたは空高く舞い上がる。
は風になびく髪を押さえた。
「どうだ?」
「気持ちいい」
「だろう。」
ルカは一本の木の枝へをおろした。は木の枝に腰掛ける。
ルカはその隣に降り立った。
「は飛べなくとも、私がどこまでも連れて行く。そちらのほうがの心配をせずに空の旅に集中できるだろう?」
「そんなに心配かけているつもりはないんだけど」
「かけられている」
ルカは幹に手を突いて、の顔を覗き込んだ。
の顔が真っ赤になる。
「」
「ルカ・・・・」
「まだ、飛びたいか?」
「うん」
ルカはニコッと笑うとを抱き上げた。
はルカの首に腕をまわす。ルカはそっとに口付けを落とすと翼を広げ空へと飛び立っていくのであった。