お菓子のように甘く
「ん〜と、ここでベーキングパウダーを100グラム」のは一人、灰色の長髪を一つにくくり慎重に秤とにらめっこをしていた。
「?」
「ほわぁっ!」
背後から突然かかってきた声には飛び上がり、ベーキングパウダーを落としてしまう。
「大丈夫ですか、。怪我は?」
「レ、レイ・・・・・」
「すみません。驚かせてしまいましたね」
「いや、そんなことは・・・・・・・」
レイはふと、の背後を見る。秤や卵の殻がたくさんある。
「お菓子を作っていたんですか?」
「あっ、あぁ。お腹減ったし」
「ボクも手伝いますよ」
「あぁ、いい、いい!俺、一人でやるし」
「そうですか?」
「そうです!だから、レイはあっち行ってて!!」
「んもう、意地悪なんですから」
レイはそう言うとキッチンから出て行く。はほっと息をついた。
レイに手伝わせたらが作っている意味がなくなってしまう。
すべてはレイのために。
「レイに、何かいつもの礼をしようと思うんだけど」
「いい考えですね」
「でさ、なんかない?」
シンは困ったような顔をしたが、隣にいたカルが小さく笑って言った。
「いつも何か作ってもらっているんだから今度はが何か作ったら?」
「あぁいい考えだな。レイもが作ったものなら喜んで食べるだろう」
「俺も食うぜ」
「ボクも!」
「ガイ、ソラ。今回はレイとの問題です。口を挟まないように」
「はぁい」
ユダとルカがを応援するような笑みを見せた。は全員に礼を言ってレイの家に戻る。
レイは今出かけている。地上に降臨しているのだろう。ちょうどよかった。
普段調理はレイに任せているが、だってできる。ただ、レイが作るものよりも味は落ちるかもしれないが。
「つっ・・・指切った」
白い指先を紅が染める。
きったところにバンソコウをはっては作業を再開した。
着実にお菓子は完成していく。特製のケーキだ。
ふんわりとしたスポンジに数々の果物が色取りを添える。
チョコレートのプレートになにか文字を書こうとして何を書こうかは手を止めてしまった。
「レイに、メッセージ・・」
書くことは一つしかない。でも、それを書いてどうしろというのだろう。
「俺とレイじゃ身分違いだし・・・」
でも伝えたい。この気持ちを。
はチョコペンを握った。
「レイ、今いい・・・・?」
「えぇどうぞ」
リビングで雑誌をめくっていたレイは笑顔を見せた。は近くによっていく。
「あのさ、レイ・・・俺、ケーキ作ったんだけど」
「が?」
「あぁ。レイに、食べてもらいたくて・・・・・・」
は背後に持っていたケーキの箱をレイに渡した。レイは嬉しそうに笑って箱を開ける。
目に入ったのは、数々の果物。それから中央に乗ったチョコのプレートの文字。
"I LOVE YOU"
レイの口元に笑みが広がっていった。
「ありがとうございます。食べるのがもったいないですね」
「レイ・・・・・」
「の気持ち、ちゃんと受け取りました。ボクも同じ気持ちですよ」
レイはケーキをテーブルにおいて立ち上がるとを抱き締めた。
の顔が急激に熱くなる。レイは真っ赤になったの顔を見て微笑んだ。
「、愛してます」
「本当?」
「はい。あなたを愛してます」
「俺も・・・レイを愛してる」
レイは指先にケーキのクリームをつけると、の口に差し入れた。
はレイの指についたクリームを舐めた。
「どうです?」
「甘い」
「でも知ってますか、。僕らの恋はこれ以上に甘くなるんですよ」
クスッと笑ったレイにはうなずいて、そっと口付けたのであった。