気持ちの裏
私はあなたの腕に抱き締められていた。「パンドラ・・・」
「私は、殿・・・」
「あなたの心、私のものとしてもいいのですか」
「はい」
あなたは微笑んだ。
あなたへの醜い想い。きっとこれはあなたを愛しく想う気持ち。
「また一緒に見に来ましょう」
「はい」
二人だけの約束だった。その約束が守られることはなかったのだけれど。
あなたは・・・・
「殿が堕天?!」
そう聞いた。私は目の前が真っ暗になるのを感じた。
何も知らない。何も聞いていない。
なんで・・・・
『また一緒に見に来ましょう』
そう言ったあなたの声と笑顔が耳の奥ではじけて消えた。
「お前も信用されていなかったようだな」
「ルシファー殿・・・・・・らしいですね」
は苦笑した。ゼウスにいわれのない罪で地獄に落とされた。
別に落ちようが、的には問題ない。
「でも、心残りがあるんです」
はオリーブ色の髪を持った神官長を思い出した。
彼は何を考えただろう。
「風よ、どうか私の想いをパンドラに届けて」
湖へ来たパンドラ。ゆっくりと地に膝を着いて涙を流した。
「殿・・・・」
風がふいた。パンドラの頬を風が撫でる。
顔をあげると笑みを浮かべたが立っていた。
はそっとパンドラを抱き締め、耳元で囁いた。
"愛してる"
パンドラは新たな涙を流した。
"ごめんなさい。私はあなたを裏切るつもりではなかった。パンドラ、信じてください"
「殿・・・・」
"愛してます、あなただけを"
パンドラは何かを言おうとしたが言葉にならない。
は笑むと姿を消した。
「また、一緒に・・・・」
パンドラの小さな呟きは湖のほとりに咲く花々しか聞いていなかったのであった。