巡る時 螺旋の如く
「あぁ、静蘭、ここにいたのね」
様、何故・・」

庭園の隅に立っていた静蘭は背後から近寄ってきた少女に困惑したような表情を見せた。
はニコッと微笑むと静蘭の隣に立つ。
一本だけ生えた小さな杏の木がそこにあった。

「この木が気になる?」
「いえ・・・・・、その」
「ふふっ・・・」

は小さく笑って静蘭を見た。

「私ね、静蘭に始めて会った気がしないの。なぜかしら」
様もですか・・・・」
「あなたも?」
「はい」

そっと静蘭の手がの頬に触れる。


"千年後も・・・・"
"愛している"


静蘭ははっとして手を引っ込めた。
も驚いたような顔をして静蘭を見つめている。

「今・・・のは?」
様も見えたのですか・・・」

それは抱き締めあう二人の男女。どこか静蘭とに生き写しであった。

「静蘭・・・」
「私は紅家の家人です。様とは・・・」
「身分違い?」

静蘭はハッとしての顔を見た。は悲しそうな顔で静蘭を見る。

「私は、静蘭が好きよ」

の真っ直ぐな瞳に射抜かれ、静蘭は思わず顔をそらしてしまう。

「静蘭は私のことが嫌い?」
「いいえ・・そんなこと、あるはずもない」
「なら、私を見て。ちゃんと私を・・」
様・・・・」
「さっきの見たでしょう?私たちは繋がっているの・・・こうして、何千年も前から・・・・・」

そう言っては静蘭の唇に指を当てた。

「運命の輪は回り続ける。そして、いつか、同じところに戻ってくるの・・・ねぇ、静蘭。そう思わない?」
「・・・・」
「あなたと愛し合うことが許されるのならば、私は・・」

静蘭の腕がを抱き締めた。
は驚きで目を丸くする。

「あなたを、愛してもいいのですか」
「何を言って・・・当たり前・・・じゃない」
「それなら、私はあなたを愛します、様・・・」
「静ら・・」
「あなたが、好きです」

の目に涙が浮かび、そして笑顔になった。




巡る時螺旋の如く
交わり離れ
終わりのない時を紡ぐ
時に過去をかすめ
やがて輪は寄り添う輪を見つける
未来を見つめ、回り続ける
その輪が誘うその先に・・・・