お兄ちゃんなんか嫌い
「お兄ちゃんの馬鹿ぁ〜!」そういう叫びと何かと何かがぶつかる音が聞こえたのは、エクソシスト神田の部屋からである。
ラビは溜息をついた。
「またあの二人はやってるのかしら・・・・」
リナリーが溜息をつきながらやって来る。ラビはうなずいた。
「またやってるんさ」
「懲りないわね・・・・」
「ユウとその妹だからなぁ・・・」
「バカッ、やめろ。部屋をめちゃくちゃにする気か?!」
「お兄ちゃんなんか大嫌いなんだからぁ!」
神田はの投げつけたクッションを片手で受け止める。
は神田をにらみつけ、泣いている。というか泣くかにらみつけるか、怒るかどれかにしたほうがいいと思う。・・・・・顔が大変なことになっているから。
「やっぱりお兄ちゃんを信じて預けたのが馬鹿だったんだっ!」
「当たるなら俺じゃなくてコムイの野郎に当たれ!」
「コムイさんに当たれるわけないじゃん!」
確かに、と神田はそのとき動きを止めて想った。
八つ当たりなどした翌日にはコムイの実験室行き間違いなしである。
しかし今回の兄妹喧嘩の発端はコムイである。コムイがが大切にしていたガラスの小瓶を割ったのだ。
「ふぇぇぇぇん、お兄ちゃんがコムイさんに預けるからだぁ。あの人絶対壊すのに〜」
「だから謝ってるんだろう!!」
「お兄ちゃんは謝っているように見えないよっ。それに、あれは・・・・あれは」
は神田をキッとにらむと部屋から走って出て行ってしまった。
神田は溜息をついて、部屋の後片付けをする。そこにヒョイっとリナリーとラビが顔を出した。
「今回もすごいわね。何があったの?」
「が大切にしていた小瓶を俺がコムイに預けてコムイが割ったんだ」
「あぁなるほど・・・・・」
「それはユウが悪いさね」
「なんでだ」
「それってちゃんの宝物でしょう?確か神田が任務地で買ってきたやつ」
「・・・・そうだったか?」
「うん、俺も覚えているさ。一緒の任務だったし。ユウ、小瓶見てみたいだな、って呟いたんさ。覚えてない?」
「んなこと覚えているわけ・・・・・・・」
神田の動きが止まった。ラビとリナリーは溜息をつく。
「ちゃん、言ってたわよ。これはお守りなんだって。お兄ちゃんが任務から無事に帰ってくるようにって」
「健気さ、ちゃんは」
どっかの誰かさんとは大違いさね〜、とラビは神田を見た。
「ちゃんに謝ったら?新しいものとセットで」
「・・・そんなことしたっては余計に泣くだけだ・・・」
「それもそうなんだけど・・・・」
「ちっ・・・・・こんな失態、モヤシだけには知られるわけにはいかないか」
「えっなんで?」
「ラビ、知らないの?アレン君とちゃん、恋人同士ってこと。同い年だし、神田と違ってちゃん、アレン君と仲がいいし」
「そうなんさ?うわぁ〜ユウどうするさ」
神田は溜息をついた。
アレンに知られればただではすまない。幸か不幸かアレンは今、任務に出ていない。
あと3日ほどで帰ってくるそうだから、それまでにと仲直りしておかなければ。
それに神田としてもの泣き顔をいつまでも見ていたくはなかった。
「の部屋に行って来る」
「いってらっしゃい。頑張ってね」
神田はの部屋に向かう。
「いるか?」
「お兄ちゃんは入ってこないで」
「・・・・・・、本当に悪かった」
「やだ。許さない」
「・・・・」
神田はそっとドアノブに手をかけた。鍵はかかっていない。
そのままドアを開けて、中をのぞく。は部屋にあるソファに体育座りをして膝に顔をうずめていた。
「」
「お兄ちゃん、ひどいよ・・・、いつだって心配しているんだよ。お兄ちゃん、いつも怪我して帰ってくるから・・・・この前だって、ひどい傷だったのに。お兄ちゃん、自分を大切にしてくれないんだもん」
神田はそっとを抱き締めた。
は神田の背に腕を回してくる。
「お兄ちゃんなんか、大嫌い・・・・」
「俺はのことが好きだけど?」
「嫌い。、お兄ちゃんなんか・・・・」
「・・・・」
神田はの頭を優しく撫でた。
「今度はもっといいもの買ってくる。、だから・・・・」
「、お土産なんかいらない・・・お兄ちゃんが無事に帰ってきてくれればいいの」
「じゃぁ次は無事に帰ってくればいいんだろう?怪我一つしないで」
「うん」
「帰ってくる。絶対に」
「本当?」
「あぁ」
「・・・・・・・うん」
は涙を拭いて微笑んだ。
神田も小さく笑っての頭を撫でてやる。
は今まで泣いていたのもなんのその。にこっと笑うと神田の首に抱きついたのであった。
「本当、ちゃんって神田の妹とは思えないくらい可愛いわよね」
「確かに・・・・」
「神田・・・・・のこと泣かせたんですね」
「どわ、アレン?!いつ戻ってきたさ!あと二日は戻らないハズ・・・・」
「任務なんてのためにさっさと終らせてきたに決まっているでしょう」
「あっアレンvv」
がアレンのもとにかけてくる。そばを歩いていた神田がいっきに不機嫌になった。
「お帰り、アレン」
「ただいま、。ボクがいない間に何もなかったですか?」
「お兄ちゃんに小瓶割られた」
「・・・・・神田」
「・・・・・」
「お兄ちゃん嫌いだよ」
の言葉に(妹馬鹿な)神田はショックを受ける。
リナリーとラビは苦笑した。
「でもね、本当は・・・・・」
お兄ちゃんのことが一番大好きなんだよ
の言葉を聞いた直後、アレンはイノセンスを発動させたのであった。