ブラックキャット
黒猫が前を横切ったら災厄の印。 あぁ。 神さまはなんて残酷なのだろう。 その日は私の恋人、ラビが任務へ旅立つ日だった。 エクソシストでない私は、科学班所属。 その日も旅立つラビを見送った。 「じゃぁいって来るさ、」 「気をつけてね、ラビ」 「おう」 そして見送りを終え、教団の外へ出たときである。 チリンッ という軽い音とともに茂みから黒猫が飛び出してきた。 「ニャォッン」 「猫・・・・・?」 しゃがみこめば、足に擦り寄ってくる。 「黒猫・・・・・・誰かが黒猫が姿を見せると悪いことが起きるって言ってたけど・・・」 そんなことあるわけない。 私は立ち上がると、猫に手を振って教団内部へと戻った。 そしてその日から数日後である。 「、大変だ!」 「班長・・・・・?どうかなさったんですか」 「ラビが戻ってきた!でも」 「ラビが戻ってきたんですか?!わぁ、よかった」 「違う、よく聞け・・・・・」 「班長?」 「ラビは怪我を負っている・・・・・・・意識がない。下手したら、し・・・・・」 私は班長の言葉を聞かずに駆け出していた。 医療班のもとへ飛び込み、そして悲鳴をあげる。 ラビの体はボロボロだった。医療班が大勢ラビの体の回りを動き回って、治療を施している。 それが効いているのかは別として・・・・ 「ラビ・・・いや・・・・・・」 ヨロヨロとラビに近づいていく私を誰も止めはしなかった。 医療班も哀れみを含んだ目で私を見ていた。 「ラビ・・・嘘でしょう?まだ死なないでしょう・・・・・?」 ラビは何も答えない。ただ黙って目をつぶっているだけだ。 「ラビ・・・起きて、起きてよぉぉぉ!!」 私の叫びと心電図のピーッという音が重なった。 なんで、と呟く私の瞳にあの黒猫の姿が映った。 翡翠色の瞳を丸くして、私をみたその猫は「にゃぁっ」と頭にくるほど可愛らしく鳴いて森の 中へ姿を消した。