突然鳴り響いた雷鳴に、轟く大音声
は朝からずっとそわそわとしていた。
理由は簡単。天気である。
空は雲が低く垂れ込め、今にも雨が降りそうである。
雨が降りそうなのに出掛けなければならないとは・・・・
正直言って出掛けたくない。しかし今日は幼馴染の秀麗に夕餉に招待されているのだ。
恋人の静蘭も待っているだろう。行かないわけにはいかないのだ。

「雷だけは鳴らないよね・・・・・・・秀麗ちゃんも嫌いだから鳴らないといいんだけど・・・」

本当はも雷が大嫌いである。傘を持ってびくびくとしながら早足に秀麗の家へと向かう。
やがてぽつりぽつり、と雨が降り出した。
は溜息をついて傘をさす。道行く人々が慌てて走り去っていく。

「うぅ・・・・・雨の馬鹿」

天気に文句を言っても仕方ないのだが、言わずにはいられない。
道には水溜りができはじめるほどに雨脚は強くなっていく。雷がなり始める前になんとしてでも秀麗の家につきたい。

「静蘭・・・・・」

優しく微笑む恋人の顔を思い出せば少しは、本当に少しは気持ちも紛れるものである。
が・・・・・・

カッ

突然周りが明るくなり、大音声が聞こえた。

やぁぁぁぁぁっ!!

はそう叫んで耳を塞ぎしゃがみこんでしまう。
雷が鳴ってしまったらもう動けない。

「せいらぁぁん・・・・」
、大丈夫ですか?」

優しい声音には涙目をあげた。
目の前に恋人の静蘭が微笑んで立っている。

「せ・・・・ら」
「やっぱり雷が鳴り始めてしまいましたね。迎えにきてよかった」
「迎え・・?」
「えぇ。雷が鳴りそうだったので、きっとは泣き叫んでいるだろうなって思ったんですよ」
「私のために・・・・?」
「あなたにためにですよ、

静蘭のさし伸ばされた腕にしがみついては立ち上がる。
静蘭は優しくを抱き締めた。

「大丈夫ですよ、。私がそばにいますから」
「うん・・・・・」

抱きついてくるの頭を優しく撫でながら静蘭は微笑んだ。

「じゃぁ行きましょうか。お嬢様も旦那様も待っていますから」
「うん。あっ静蘭・・・・・」
「はい」
「・・・・・・手、つないで」

の手を静蘭は強く握った。

「これで・・・・・雷も怖くないから」

静蘭は軽く笑うとさした傘をそっと傾けた。
静蘭が離れるとの頬は真っ赤に染まっていた。

もう雨はやんで、雷もなりやんでいた。