輝き
何故自分が彼を助けようと想ったのかわからない。そもそも何故彼に声をかけたのだろう。安倍家の人間だから?自分と同じように神を従えていたから?
いや、違う。そんな理由ではない気がした。そんなに安っぽい理由で彼のそばへ行ったのではない。
では何故自分は姉から少しだけはなれて昌浩に近寄ったのだろう。
きっとその理由は彼の魂にあるのかもしれない。
「昌浩殿」
「殿!身体の怪我はもう大丈夫なんですか?」
「はい。既に完治しました。お気遣い感謝します」
昌浩の顔が嬉しそうに輝いた。
ふとは彼の魂が少しやつれていることに気がつく。人の魂を見ることができるようになって、もう何年経ったのだろう、と思いそして気がつく。
自分が彼に魅かれたのはこの魂のせいだと。
昌浩の魂は澄んでいて、姉のように銀色に輝いてるわけではない。彼の魂は本当の透明だったのだ。
一点の曇りも穢れも染みもない、純粋な魂だった。始めてみた時から彼に魅かれるのはこの魂を見ていたからなのだろう。
はじめは不透明だった魂は時が経つごとに透明さを増して行った。そして今ではもう完全な透明になったのだ。
この透明な魂が好きだった。
「翡乃斗・・・・・」
「うん?」
「僕の魂はどうなっているのかな・・・・」
「・・・・・・・・わからん。俺は見えないからな」
「昌浩の魂はすごく綺麗だよね。透明で・・・・・・・内から輝いて見える」
「羨ましいのか?」
「・・・・・・・・・きっとねたましいんだよ。僕は」
あの魂の色が、輝きが、そしてたくさんの人々に愛される彼が・・・・そう自分はとてもねたましいのだろう。
だから・・・・・だからこそ彼に魅かれ続けるのだ。
「、大丈夫だ」
「えっなにが?」
「お前の魂も十二分に綺麗だと俺は思う。実際はよくわからないが、俺はそうだと思っている」
「翡乃斗・・・・・・うん、ありがとう」
彼のことを慰めようとするのがわかった。だからやさしく微笑んで式神の頭を撫でた。
だがやはり彼の魂に魅かれていることに変わりはない。きっと彼に関わることとなる人間の魂の綺麗なものだろう。
そして彼に関わる自分の魂が少しでも彼の影響を受けて透明になってくれればいいな、とは思ったのであった。
昌浩はふとを背中を見た。
その背に白く輝く翼を見たような気がした。
「ねぇもっくん」
「うん?」
「どのの背には白い翼がはえているんだね」
「・・・・・・・・・・・・・」
物の怪は無言のまま昌浩の熱を測った。昌浩は肩から物の怪を落とすとの背を見続ける。
「きっとあれは魂の色なんだ・・・・・・なんとなくだけどそうわかるんだ」
「ほぅ。でその色はどんな感じなんだ?」
「すごく真っ白。降り積もった雪みたいに・・・・・・・何者にも汚されていない色だよ」
「そうか・・・・・・」
「羨ましいな。俺の魂もあんな色だったらいいのに」
「お前は晴明の魂を受け継いで真っ黒だぞ」
「それって俺が腹黒いってこと?!」
「きっとそうだ」
「ひどいなぁ・・・・」
昌浩は苦笑しながらに背をむけた。
白と透明な二つの魂は異なる道を歩みながらも、互いを見つめていた。
決して二つが交わることがないことを知りながら・・・・・