約束したから
「ユウラ・・・・」「ルシファー・・・・・様っ」
胸の痛みなんか感じない。ただあなたが目の前にいるだけで・・・・・・。
「ユウラッ?!」
自らの胸を貫いたとき、一番初めに聞こえたのは四聖獣たちの驚愕した声だった。
あなたたちがゼウスに反逆して、私が討伐を命じられて・・・・・・私は嬉しかった。
あなたたちと戦えることが、じゃない。やっとあのお方の下へ行けるのだから。
「四聖獣の皆さん。今までありがとうございました」
笑顔でお礼を言う私にあなたたちは首をかしげた。
「楽しい思い出を・・・・ゼウス様の下にいても苦痛じゃなかったのはあなたたちがいてくれたから。本当にありがとう」
"そしてさようなら"
痛みは感じなかった。ただ幸福感がこの胸を満たしていたから。
「ルシファー・・・・・・様」
薄れ行く意識の中、あなたが私に別れを告げたときのことを思い出していた。
「反逆・・・・・・そんなことをしたら天界を追われてしまいます!」
「覚悟の上でだ」
「そんな・・・・・私は、私はあなたの敵になりたくない!!」
「ユウラ・・・・・・」
「あなたのおそばに・・・・・私は・・・・・・・・・私は、あなたが好きです、ルシファー様」
「・・・・・」
俯いて涙をこぼす。あなたがほんの少し困った顔をしたのが気配でわかった。
「・・・・・・・すまない」
そう呟いて私に背を向けるあなたに私は叫んだ。
「私はいつかゼウス様のもとを放れますっ自らの胸を貫いてでも!!約束します、必ず、必ず貴方の元へ参りますから・・・・・・だから」
"私を置いて行かないで"
その言葉は喉が詰まって言えなかった。
そして今、私はこうして約束どおり胸を貫いた。
反逆など怖くない。ただあなたのそばにいたいだけだから。
後悔があるとすればそれはひとつだけ・・・・・
"あなたたちを救えない私を許してください・・・・・四聖獣"
意識は唐突になくなった。
優しい声に私は目を開けた。
「ここは・・・・・」
「地獄界ですよ、ユウラ」
「ガブリエル様・・・・・ではルシファー様も?!」
「えぇ。あなたのことをいたく心配しています。自ら胸を貫くなんて、と」
「でも、そうでもしなければ私はゼウス様の元から逃げられなかったから・・・・・・・」
「わかっています。さぁルシファー様がお待ちですよ」
ガブリエル様に続いてあなたの元へと行く。
「ユウラ、待っていた」
「ルシファー様・・・・・・」
懐かしいあなたは少しも変わっていなくて・・・・・。
腕の感触も、そっと頬を撫でていく指先も変わっていなかった。
「待ち望んでいた、お前が来る時を・・・・本当にくるとは思いもしなかったが」
「約束したから・・・・・・自分の胸を貫いてでもあなたのもとに行くと・・・・・」
「ありがとう、ユウラ」
「はい・・・・・・・」
それが罪なのだとしても、私はきっと後悔しない。
あなたと交わした約束のほうが遥かに大事だから。
なにもいらない。ただあなたのそばにいられるだけで、私は幸せ・・・・・