「紅蓮」

その名を呼べるのはお前と昌浩、晴明だけだ。

「綺麗な色・・・・」
「お前、俺の炎が怖くないのか?」
「なんで?綺麗な紅よ。青龍は地獄の劫火だ、なんて言ってるけど私はそう思わない。紅色をした炎、ただそれだけよ」

私の中にも同じ紅が流れてる、ってお前は言ったな。
軽く俺の爪で腕を傷つけたときにはひやりとしたものだ。

「ほら」
「お前な・・・・自分を傷つけて何が楽しいんだよ、まったく・・・」

手を取って傷口に舌を這わせれば、ゆっくりと目を閉じて快感を味わう。
ほんの少し、俺たちは狂っていたのかもしれない。

「紅蓮・・・・・私の中の血は真っ赤なのよ。あなたの中に流れる血も・・・・」
「あぁ」
「ふふっ、私ったら紅に執着しすぎね。きっと、あなたの紅が美しすぎるから・・・・・・」

俺たちは背中合わせに会話している。

「晴明様があなたに"紅蓮"って名前を与えたのも分かる気がするわ。水面に浮かぶ紅の蓮・・・・素敵ね、紅蓮」
「お前がそういうのならきっとそうなんだろうな」
「ふふっ・・・・」

きっともうお前はもう手遅れだったのかもしれない。
そしてお前の異変に気がつけなかった俺は・・・・。

「なっ・・・・」

腹部に走った衝撃を感じると同時に喉の奥から血が出てくる。
俺を見上げながら、俺が吐き出した血に染まりながらお前はそれでもなお微笑んだ。

「素敵・・・・・紅蓮の、血」

手についた血を舐めながらお前は笑った。

「紅蓮、紅蓮・・・・・私だけのあなた」

歌うように呟きながらお前は剣を余計に深く突き刺す。

「ぐっ・・・・」
「紅蓮、私もすぐあなたのあと追うからね・・・待っててね、紅蓮」

剣が抜かれると同時に傷口から大量に出血する。意識が朦朧としていた。
血の味が口いっぱいに広がって、お前の舌が侵入してくる。

「おやすみ、紅蓮・・・・・・・」

目を閉じる前に見えたのは、お前の悲しそうな笑顔・・・・
泣くな、という声はお前に聞こえたのだろうか・・・





あなたを手に入れられないのなら殺してしまえばいい。
そうすればあなたは永遠に私のもの・・・・
ねぇ紅蓮・・・・・・きっと私達はもう壊れていたんだよ