弟
朱雀院樺月と白月は双子だ。が、白月は自然と樺月のことを"兄"と呼ぶようになっていた。それと並行するようにして樺月も白月のことを"弟"と思うようになっていた。
「・・・・・・・今考えると確実に白月のほうがお兄ちゃんですよね」
アレンが茶をすすりながら言う。
ラビとリナリーもその脇でうなずいた。白月は苦笑する。
「確かに兄貴の言動はどうかと思うな。アレンをことあるごとに襲おうとするのも含めて」
「本当に・・・それだけはやめてほしいですよ」
「でもあれは本当にアレンのことを愛してるっていう表現だから。兄貴、器用そうでいて微妙に不器用なんだ」
白月はそう言って珈琲をすする。
「ねぇ、白月君と樺月さんだったらどっちが早く生まれたの?」
「俺」
「なんで白月がお兄さんじゃないさ?」
「俺は弟でいーの。不思議と兄貴が兄貴じゃないと収まり悪かったし。俺も弟のほうが気が楽だからさ。それに俺は兄貴のことを後ろから助けたかったから」
「えらーい。白月君、かっこいい」
「ありがと、リナリー」
「白月」
「ん、どした、兄貴」
談話室に困り顔の樺月が入って来る。
「頼みがあるんだけどいい?」
「大丈夫。なに?」
「あ〜ここじゃ話し難いから部屋で」
「了解。じゃぁまたあとで、戻ってくるから」
白月と樺月は何事かを話しながら談話室から出て行く。
アレン、ラビ、リナリーはその後姿を見送った。
「二人とも仲がいいわね」
リナリーが呟くように言う。
「そうさね。なんだか二人とも時と場所で兄と弟を交換してるって感じさ」
「それはありますね。今を見てみれば白月のほうがお兄さんに思えましたし」
「結局のところ双子だからかしらね・・・・」
「じゃぁまとめていいですか、彼らについて」
アレンが尋ねると二人はうなずいた。
「結局のところ両方とも弟、ということでいかがでしょうか?」
「あっそれいいさ」
「確かに・・・」
「二人とも俺たちよりかは年上だろうから、少なくとも俺たちにとってはお兄ちゃんって感じだけどね」
「でも時々二人とも子供っぽくなりませんか?」
「なるなる。そういうときはあぁ弟だなって思うな」
「へっくしっ!」
「兄貴、風邪?」
「ん〜誰かが噂でもしてるのかな?」
「なんの噂だよ・・・・」
「アレンと僕の「却下」」
「え〜」
「え〜じゃねぇよ・・・・ったく、足に刺さった棘ぐらい自分で抜けっつぅの」
白月はぶつぶつと言いながら棘を抜くのを再開したのであった。
弟ねぇ・・・・・
俺は兄貴って呼んでるけど、兄貴のほうが弟じゃないかってぐらい子供っぽい(精神年齢が低いのか)
まぁ別にいいんじゃないの、どっちが弟でも
俺たちが二人だけの兄弟であることに変わりはないんだからさ