このまま抱き締めていて、永遠に
「ユウラ」「ユダ・・・・・どうしました?」
ゆっくりと目線をしたに下げる。崖の淵に座るユウラの瞳になじみの天使の姿が映った。
「何をしているんだ?」
ユウラは彼から視線をはずし、空を見上げた。黒い空に明るい満月が浮かんでいる。
「月を・・・・・どうやったら月を手に入れられるかなと考えていたのですよ」
「・・・・・・ルシファーか」
「・・・・・・・・あの人のそばにいたかった・・・・・ずっと」
手を伸ばせば手に入りそうなそれは、しかし手に入らなくて
「この身に巻かれた鎖はいつ私を放してくれるのでしょうか」
「ユウラ、こっちにこられるか」
ユウラはうなずくとトンッと手で崖を押した。ゆっくりとユウラの体が宙に浮かぶ。
ユダはそっとユウラに手を差し伸べ、その体を受け止めた。
ユダの腕の中に降りたユウラはその肩に顔をうずめる。
「私はいつも肝心な時に無力です・・・・・・少しでもルシファー様のお手伝いができればよかった・・・・」
「ユウラ・・・・そんなこと」
「一人ぼっちだった私を見つけてくださったのはあの方です・・・・寂しかった私を優しく抱きしめてくれて・・・・・一人ぼっちはいやなのです。もう、二度と・・・・・誰かが傷つくのは見たくない。たとえそれがきれいごとだと言われようとも」
ユダは震えるユウラの体を抱き締める。
「二度と誰かが傷ついてここを落とされていくのは見たくない。あなたもそうでしょう、ユダ。あなたは・・・・いなくならないでしょう?」
ユダはユウラの涙が滲んだ瞳を見る。白銀に輝く瞳はかの天使長が好んだ・・・そして自分も求めていた色
「俺はお前を置いてなんか行かない。一緒にいくだろう?」
「あなたがゼウス様に反逆しても私は・・・・・私はあなたの敵にまわるだけ・・・・・」
ユウラの目から涙が零れ落ちる。
「ずっと・・・ずっと抱き締めていて欲しかった。誰かにずっとそばにいてほしかった・・・・・私は・・・・」
「ユウラ・・・・俺がそばにいてはいけないか?」
「ユダ・・・・」
"私ではいやか、ユウラ。お前と仲良くしている天使は"
「・・・・いいえ」
ユダはユウラの額に唇を落とした。
「お前が望むのならば、俺は・・・・・・このままずっと抱き締めていよう」
「ずっと?どこにいても?」
「あぁ」
ユウラはしっかりとユダの首に腕を回した。
「大好きですよ、ユダ」
「あぁ、俺もだ。ユウラ」
その腕でずっと私を捕らえて放さないで・・・
ずっとこのままに・・・・
そう願うのは罪なのでしょうか。