初雪
「もっくん、ホラ見て。すごい積もってる」

「初雪かぁ・・・・・」

「もっくん、雪の上に立ったら目立たないね」


昌浩はあはははと笑って言う。

物の怪は、ん〜〜と首をかしげた。


「でも俺の目は赤いし、目立つところもあると思う」

「じゃぁやってみようか。俺が屋根の上に立つからさ、もっくん雪の中に立ってみてよ」

「たつのか?寝るんじゃなくて?」

「あっ寝たほうがいいか・・・・・・うんじゃぁそうしよう。じゃぁ俺屋根の上に行くから。六合頼んでいい?」


長身の神将に抱きかかえられ、昌浩は屋根の上に立った。屋根から下を覗き込んで軽く笑う。

真っ白い雪の中、あの物の怪の額にある十字架の模様と紅い瞳、首元の突起がやけに目立つ。


「雪の中にいる意味がないように思えるよ」

「だろうな」


昌浩はまた六合に抱えられ下に下りた。ポスッという音がして足が雪に埋もれる。


「新雪っていいね。誰の足跡もついてないし」

「既に俺の足跡がたくさんついてるぞ」

「わっ・・ちっちゃぁい」


昌浩はくすくすと笑った。

物の怪は器用に前足で雪球をつくると昌浩に向かって投げる。ちょうど昌浩は笑いを治め、物の怪のほうをむいたときだったため、見事顔に雪球が直撃する。


「よっしゃぁ!!」

「この・・・・やったなぁ」


昌浩も負けじと雪球をつくって物の怪に投げる。が、物の怪は器用によけた。


「物の怪のくせに〜」

「物の怪言うな、晴明の孫」

「孫、言うな〜〜」


昌浩は手当たり次第に物の怪に向かって雪を投げていく。さすがの物の怪もそれをよけきれるはずもなく・・・・・・


「もっくん雪だるまの完成〜」


不機嫌な顔と尻尾の出た小さな雪だるまができていた。


「昌浩、つめてぇ」

「出して欲しい?」

「このまんまじゃ凍える」


仕方ないなぁと笑って昌浩は物の怪を雪だるまから解放してやる。

物の怪は地に降り立つとぶるぶると体を震わせて水気を飛ばした。


「う〜風邪ひきそうだ」

「おいで、もっくん」

「なにするんだよ」

「あっためてあげるから」


そう言って昌浩は自分の狩り衣の中に物の怪を押し込んだ。


「うわっ、冷たい!!」

「そりゃぁ雪の中に埋もれていたからな・・・・」


物の怪は昌浩の胸元から顔をだして自分を見ていた昌浩の鼻をぺロリと舐めた。


「?!///」

「ありがとな、すげぇあったけぇ」

「もっくん・・・・・・・うん、俺も。だんだんもっくんあったかくなってくるよ」


昌浩と物の怪は笑う。







それは雪がくれた小さなぬくもり。