喧嘩するほど仲が良い
「「ユウラッ!」」本を読みながらユウラは溜息をつく。また巻き込まれるのか・・・と
飛び込んできたのはユウラの友、白虎のガイと朱雀のレイ。二人ともかなり怒っている。
「はいはい・・・・・今回はどうしましたか?」
かけていためがねを外し、ユウラは二人を見た。
ユウラがたずねると同時に二人同時に話し始める。
「あ〜はいはい、一人ずつどうぞ。まずはレイ」
「聞いてください。ガイったら僕が大切にしていた小箱を落として壊したのに謝りもせず、俺じゃないと言い張るんですよ」
「俺じゃねぇって」
「ガイ、落ち着いて。あなたは?」
「俺はレイが言ったことと、あともうひとつ・・・・・俺の猫が一匹いなくなったんだ。ぜってーレイが連れ去ったんだ」
「僕ではありません!!」
「お前だね!!」
ユウラは額を押さえ嘆息する。何を言っても聞かないだろう、この二人は。
「ユウラさん、ちょっといい?」
「マヤ、いいところに。お願いがあるのですがいいですか?」
「えっ、うん別にいいよ」
「ガイを連れて猫探しをお願いします。私はレイといますから」
「わかった。ほら、ガイ行こうよ」
にらみ合っているレイとガイを引き離し、マヤは外に出て行く。ガイはレイにむかって、べーっ、とやるとマヤのあとを追った。
「レイ、その小箱というのはもしかしてもしかしなくともルカからもらったやつですか?」
「えぇその通りです。よくわかりましたね」
「・・・・・・・実はそのことなんですけど・・・・・」
ユウラは軽く咳払いをして言った。
「ルカ、あなたに渡すものを間違えたらしいです・・・・・あれは元々壊れていて・・・ちゃんとしたものを渡そうと思ったらあまりにあなたが大事にしているものだから渡しづらいと・・・・」
「そうなんですか・・・・・・」
「はい・・・・・・そうなんです」
しばしの沈黙が場を支配した。レイはやがて困った顔をする。
「どうしましょう・・・・僕、ガイを・・・・・」
「ガイならきっとわかってくれますよ」
そう言ってレイを慰めるユウラ。ちょうどそのときガイが腕になにかを抱えて飛び込んできた。
「レイッ!」
「・・・・・・ガイ、どうしたんですか。そんなに息を切らして」
「猫いた!!」
ガイは腕に抱えていたものをレイの目の前に差し出した。白い子猫である。
「木の上に上って降りられなくなっていたみたいなんだ。それで・・・・・・・ごめん、レイ!!」
「ガイ・・・・いえ、僕のほうこそ・・・・・・・・・」
とりあえずは仲直りしたらしい。なんだかんだやっても結局二人は仲がいいのだ。
喧嘩するほど仲がいい、確かにその通りだな、とユウラは思う。
「ユウラ、騒がせてしまったお詫びに今度夕食に招待したいのですが・・・・・」
「えぇかまいませんよ」
「じゃぁまた。行きますよ、ガイ」
「おうっ。じゃぁなユウラ」
「えぇ・・・・・」
二人が家を出て行くと途端静けさが戻った。
ユウラは軽く溜息をついて椅子に腰掛け、また本を開く。しばし静寂が流れた。
が。
「ユウラ〜〜〜〜!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・今度はなんですか」
まだまだユウラの安息の時間は訪れないようだった。
またもやガイとレイが飛び込んできたのだから。
『喧嘩するほど仲が良いという言葉を知っているのでしょうか』
そう思ったユウラだったが、また騒ぎ出した二人を止めるために本を閉じたのであった。