想いを残して
あなたと過ごす時間がたまらなく好きだった。あなたの微笑はとても美しかった。
優しく名を読んでくれることも、そっと想いを伝えることも。
あなたの心が私にとって大切な宝物だった。それなのに・・・
それなのに何故あなたは
"太裳、大好き"
「、体が冷えてますよ」
「あっ太裳。ほら、星が綺麗だよ」
「・・・本当に」
「うん」
背後からそっと腕を回してを抱きしめる。
ほんのりと頬を染めては太裳を見た。
「いいね」
「でも私はあなたのほうをずっと見ていたいですよ、」
「もう、太裳、恥ずかしいからやめて?」
「ふふっ、冗談ですよ」
「えー、冗談は嫌だなぁ。私は太裳のそばにいられるだけでいいの」
「じゃぁ、ずっとそばにいますよ。あなたが嫌いになるまで・・・」
「太裳のこと嫌いにならないよ。私はずっと太裳のこと好きでいるから」
の頬に軽く口付けた。は微笑むと、太裳の唇と己のそれを軽く重ね合わせた。
「愛してるよ、太裳」
「私もです、」
ゆっくりと流れていく時間は、私たちにとって短かった。
「太裳」
あなたの呼ぶ声が好きだった。
「愛していますよ」
人であるあなたの限られた命が終わるそのときまで、ずっと・・・・・・・なのに
「何故・・・・っ」
怨霊に胸を貫かれたを見てしまった。
晴明が何かを叫ぶが太裳の耳に届かない。
「っ」
「太・・・裳」
差し伸ばされた手が下に落ちた。
地に染み込んで行くの血。
地面に崩れ落ちたの体を抱き上げると太裳の服に血がついた。
「太・・・裳」
「・・・・」
「泣かないで・・・・・・そばにいるから」
ゆっくりと、砂時計がこぼれていくように、由羅の命はこぼれていく。
「・・・・」
「あなたといられてよかった・・・・・ありがと」
の体が崩れていく。
「、逝かないでください・・・まだ、まだ早すぎるでしょう?」
人と神将だから
愛し合ってはいけなかった?
これはその報い?
太裳の頬をの手が滑り落ちていく。
その手に自分の手を重ねる。
「太裳・・・・・体はなくても心はここにあるから」
頬から手の感触が消える。
微笑んだの体が太裳の腕の中から消えた。
悲痛な叫びが木霊した。
「晴明、我は落ち込んでいる太裳を見るにたえられん」
「太裳の中での存在は大きかったのね」
「人だから、神将だから愛し合ってはいけないという決まりはない。太裳もも幸せだったろうに・・・・」
あなたが逝ってしまってからどのくらいの時が流れたのかわからない。
あなたがそばにいることが当たり前だったから。
だから、死んだ、なんて本当に現実感がなかった。
"太裳"
そんな声に振り向けば後ろに笑顔のあなたがいそうで。
"なに泣いているの?私はあなたのそばにいるのに"
愛しそうに頬を撫でていく感触は・・・あなたそのもので
"体はない。でも私の想いはあなたのところにある"
「想いがあっても、あなた自身がいなければ意味がないのに・・・・」
泣き笑いの顔をして太裳はに腕を伸ばした。