「紅蓮」

お前の声で
そう呼ばれるのが好きだ。

「愛してるわ」
「俺もだ」

蛍が乱舞する岸辺で俺たちは口づけあった。
人と神とを超えて。

「あなたに出会えてよかったわ」
「過去にするなって」
「ふふっ、そうね」

俺から見てみれば人は蛍のように儚いものだ。
短い命・・・・一瞬だけ輝いてすぐに消える。
だからこうして限られた時間の中でそばにいるのだ。たとえあとで辛い思いをするということがわかっていても。

「紅蓮」
「どうした?」
「見て・・・蛍が」

お前の指す方向には蛍の群れが・・・・
ちょうど夏の最中
蛍達も恋人を探しているのだろう。

「綺麗ね」
「あぁ」

恋人の体に腕を回す。
柔らかい肌の感触が気持ちよかった。

「愛してる」
「うん。さっきからなんども聞いてるよ」
「ずっと一緒にいてくれるか?」
「もちろん。私に断る理由がないもの。でも紅蓮、私蛍みたいにお尻光らないわよ?」

お前の言葉に俺は噴出してしまった。
顔を紅くして抗議してくるお前は本当に可愛くて

「お前が蛍みたいに光っているから俺にはそれで十分なんだよ。それにお前の尻が光ったらほかの男に奪われる」
「奪われないよ。紅蓮が守ってくれるんでしょう?」
「もちろん」

蛍のように一瞬で消え去る命。
それでもお前は最期の時まで輝き続けるのだろう。
そして俺は輝くお前を必ず見つけ出す。
どこにいたって必ず・・・・・