あたしを殺して
何故、あなたは・・・・アクマなんかになったのですか?

ッ!」
「アレン・・・・どうしたのですか?」
「よかった。会いたかったんです。あなたが任務に行く前に」
「あら」
クスリと笑みを漏らして美しい青い瞳を面白げに輝かせる。
白銀の髪は日にあたるたびにその輝きを増していくようで・・・・・
アレンは・ブランシェが大好きだった。もまたしかり・・・・
「気をつけてください、
「えぇわかっています。私も百連戦魔のエクソシストです。大丈夫ですよ」
「信じていますよ、
ははい、と笑って言うとアレンに口付けた。アレンはの髪に触れる。
「帰ってくるのを待っています」
「是非、そうしてください」
はふわりと微笑むと任務へとむかって行った。
そしてそれがアレンがを見た最後となった。
、遅いな・・・・」
「アレンくん、次の任務なんだけど・・・・・・いい?」
「はい大丈夫です」
アレンはコムイから次の任務についてを聞いた。そして二人の探索部隊とともに任務地へと出向く。
任務地は巨大な戦争でもあったかのように、あたり一帯が焼土と化していた。
「ひどい・・・・」
「アレン殿、ここは確か殿も来たはずです」
も?!」
では、ここにがいるかも知れない・・・・そう思ったアレンはを探して歩き始めた。
しかしいくら探してみても、見つかるのは骨と化した人間の身体だけ。どこにもはいなかった。
と、アレンは白い羽が積もった場所を見つけた。ふとそこへ引き寄せられるようにアレンは足をむける。
「・・・・・・・これは」
それはアレンの良く知るのイノセンスだった。
白い羽を背中にはやし、その姿はまるで大天使・・・・・・美しいに似合ったイノセンスだった。
しかし何故ここにのイノセンスが・・・・?
「アレン殿っ!ぐわっっ」
背後で探索部隊の悲鳴が聞こえた。アレンの左目がアクマの姿をとらえる。
背後を振り向くアレンの瞳に細身の姿がうつった。
「・・・・・・・・・?」
白い腕を真っ赤な血で染め、そこにが立っていた。
の瞳は虚ろで、アレンなど見えていないかのようだ。
、なんでその人たちを殺したんですか」
そうアレンが尋ねたときだった。の身体が視界から消え、それと同時にアレンの腹部に鋭い痛みがはしった。
口から血の塊を吐き出しながら、アレンは後ろへと吹き飛ぶ。
・・・・・?」
アレンは困惑した表情でを見た。の身体がビクンッと振るえ、その瞳から血の涙がこぼれる。
「嘘・・・・・嘘でしょう?!」
アレンの目の前で愛しい恋人はおぞましい姿に変わって行った。
レベル2のアクマだった。
「なんで・・・・・・・・・・なんで・・・・・・・・」
「殺ス・・・・・・殺ス・・・・・・」
ふっとの腕がアレンにむかって振り上げられた。
アレンは動けなかった。ただ変わり果てた恋人の姿にショックを受けていたのだ。
・・・・」
振り下ろされた腕はアレンを切り裂くことはなかった。アレンは驚いて目を見開く。
「・・・・・・・・・・?」
「ア・・・・・・・レン・・・・」
、意識があるんですか?」
「・・して」
「えっ?」
「私を・・・・・・・・殺して」
アレンは驚愕に目を見開く。何故?いったい何故そんなことを?
「お願い・・・・・あなたにしか・・・・・・・・頼めない」
「イヤですっなんであなたを・・・・・」
「殺して・・・・・・・もう誰も死なせたくない・・・・・・」
・・・・・」
「お願い・・・・・・あと少ししか・・・・・・・お願い、あなたがわかるうちに殺して・・」
アクマになったの顔が苦しげに歪む。アレンはを見た。
「どうしても、そうしなきゃいけないんですか?」
「うん・・・・・・」
アレンは立ち上がってイノセンスを発動させる。は小さく微笑むと目を閉じた。
「あなたのこと・・・・・忘れません。そして・・・・・こんな形であなたを殺すことを許してください」
「大丈夫です・・・・・私のほうこそ、あなたに辛い思いをさせてしまうことを許してください」
「僕があなたを許さないはずがないでしょう?」
アレンは小さく笑うとイノセンスの左腕での身体を切り裂いた。
鎖に囚われた魂がパッと輝く。
・・・・・・」
"アレン・・・・・・・ありがとう"
はそう言うとアレンの頬に手を当て、そして天へと昇っていった。
アレンはその場に座り込む。背後にあった大量の羽が風に舞いあがる。
・・・・・・・・僕に殺してください、って頼むのは反則ですよ・・・・ひどいじゃないですか」
その場から動こうとしないアレンに降り始めた雪が積もる。
静寂が少しずつその場を覆い始めていた。