紅い糸
夜空は雲ひとつない満天の星空。明かりもいらないほどに月の光が差し込んでくる。
そんな中はじっと夕焼け色の瞳を見つめた。
白い体躯は猫のよう。しかしこの世に存在するどんな動物もそれには似ていない。
それは一般的に妖怪、化け物、物の怪といわれるものたちだ。これは飼い主(?)から"もっくん"と呼ばれている。
だからもそう呼んでいた。
もっくんの夕焼け色の瞳がクルンと夏樺を映し出した。
「もっくんって「もっくん言うな」
即座に返された言葉には苦笑した。
「紅蓮、その夕焼け色の瞳、綺麗ね」
もっくんは物の怪ではなかった。彼の幼い主は、物の怪だと言っているが・・・・・・
彼は十二神将、神の末席に連なる存在のものたちだ。
火将、凶将・・・・騰蛇、それが彼の本当の姿であり、本当の名だ。
しかし彼らを従える主、安倍晴明から彼は名を一つ貰った。
『どこか地獄の劫火だというのだ。まるで水面に咲く紅の蓮のようではないか。そうだ、お前の名は紅蓮にしよう』
本人から聞いたことだ。彼はその紅蓮という名を主である晴明、彼の孫昌浩、そしてにしか呼ばせていない。
別には彼の主ではない。しかし彼にとっては特別な存在だった。
「・・・・・」
「うん?」
物の怪の姿から、瞬き一つの間に彼はたくましい青年の姿へ変わる。
は彼のことを一度たりとて恐ろしいなどと思ったことはなかった。紅の髪も瞳も大好きだ。
そして、彼自身も。
「紅蓮・・・・・いい名前だよね」
「あぁ。俺の至宝だ」
「紅蓮にとっては昌浩も晴明様も大事な人だもんね。そんな人から貰ったものってすごく大事にするよね」
「が一番だ。俺は・・・・・・お前が一番大事だ」
紅蓮の腕がに伸びた。
「俺はが好きだ・・・・・」
「うん。でも人と神将の寿命が違うこと、紅蓮が今守るべきものは昌浩だってこと、忘れないでね?」
「あぁ」
紅蓮はを強く抱きしめた。
温かい。この温かさが心地よくって、好きになった。
自分の過去を知っても優しく微笑んでくれた。その声で紅蓮を呼んで、その手で抱きしめてくれた。
「紅蓮?」
「あっ・・なんだ?」
「今度、どこかに出かけようか」
「どこかに?」
「うん。ちょっとだけ昌浩にお休み貰って二人で」
は微笑んだ。
紅蓮は少し考える。一般市民に紅蓮の姿は見えない。
「都の外に。そうだ、貴船まで行こうか。龍神様に会いたいし」
「都の外?!」
「うん。だめかな?」
は首をかしげた。見鬼の才を持つものは狙われやすいということを知ってて言っているのだろうか。
「外に行っても紅蓮と一緒なら問題ないしね。紅蓮が守ってくれるでしょう?」
の笑顔に紅蓮は詰まった。
確かに守るつもりだ。
しかし都の外とは・・・・・
「紅蓮?」
「・・・・・わかった」
「やったぁ」
は紅蓮に抱きついた。
そしてそっと何かを取り出し、紅蓮の小指に結びつけた。
そして自分の指にも器用に結び付けていく。
「・・・・・紅い糸?」
「うん。あのね、運命の恋人たちは小指同士、赤い糸で結ばれているんだって。でも見えないから、こうやって結んだの」
「・・・・・・・」
「ずっと恋人でいてね、紅蓮」
「・・・・・・・・」
紅蓮は夏樺を愛しいと思い、また抱きしめた。
「愛してる」
そっと耳元で囁くと夏樺は小さく笑って紅蓮を見た。
「私も。だからずっと互いを好きでいようね」
「あぁ」
二人は月に見守られながら、そっと口付けた。
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LOGO/7のノラ様へ
こんな感じの話でいかがでしょうか?
ノラ様の反応が気になってびくびくとしております
こんな感じでよろしければ、どうかお持ち帰りになってくださいませ
もっとこうして欲しい、などの要望があれば書き直しますので、遠慮なくどうぞ
紅蓮、青龍、六合etc.がお待ちしております。是非またいらしてください
それでは今後とも宜しくお願いします
06.08.21