水面の華
「はた迷惑な・・・・・」 「・・・・・二人とも悪気はないんだよ」 「宵藍、紅蓮。問答無用でそこに座っている二人組みを追い出して!」 「というかまずはその仲違いをどうにかしろよ」 昌浩は苦笑し、紅蓮は溜息をついている。宵藍は我関せずという様子である。 一方、は怒りに震え、リビングをにらみつけている。 そのリビングの中では二人の人間がにらみ合っていた。 紫苑色の瞳を持つ青年と浅葱色の髪を持つ青年である。 「静蘭、太裳・・・・・さっさと出て行かないと怒るわよ」 「あぁ、、お邪魔しています。そうですね、こいつを追い出してからですね」 「それはこちらの台詞でしょう」 互いににらみ合う青年たちに一発ずつ拳を落とす。 昌浩がビクリとしてを見た。 「あと十数えるうちに出て行きなさい。いーち、にーい、さーん、しーい、ごーお・・・」 「ねぇ紅蓮」 「なんだ、昌浩」 「十数え終わったらどうなるの」 「雷が確実に落ちる」 「・・・・・・・」 「はーち、きゅーう、じゅーう・・・・・・・いい度胸ね、静蘭、太裳」 ニッコリと美しい微笑を浮かべは静蘭と太裳を見つめた。 そしてすぐあとに巨大な雷が二人を直撃した。 間近で見ていた昌浩はその見事な雷に感動した。 「かっこいい!」 「ありがと、昌浩」 は昌浩の賞賛の言葉に背後を振り返る。 紅蓮と青龍はあえて視線を合わせないようにした。 「さて、どこかにお昼でも食べに行こうか」 「の奢り?」 「あんまり高くなければね」 「よしっ」 なんとも和やかな会話である。しかし、雷に打ち据えられた二人は黒こげである。 紅蓮が哀れそうに二人を見つめ、先に外にでた者達のあとを追った。 静蘭は軽く頭をふって起き上がる。手加減はしてくれたようだが、さすがにいたい。 反対側を見ると太裳も起き上がっていた。 「随分とやられましたね」 「それはあなたも同じことでしょう」 二人は座りなおすとまた互いににらみあう。 「ところで、何故そこまでに執着するのですか」 と太裳。 「あなたには関係のないことでしょう」 と静蘭。 「いいえ、かなりありますよ。あなたがいなければ私がを手に入れられるでしょう」 と太裳。 「それは私も同じです」 静蘭も言い返す。 この場にがいればまた雷が落ちるところではある。 静蘭はふと視線を太裳からそらした。 「は危うい。だからこそ守ってやらなければいけないと思うでしょう」 「あなたもそう思うのですか」 「残念ですがね」 「・・・・・・・・・はまるで水面に立っているよう」 太裳は目の前におかれた茶器を見つめた。 まだ半分以上残っているお茶はゆらゆらと揺れていた。 「ふとした拍子に水へ落ちてしまいそうな感じがします」 「・・・・・・・・・・」 静蘭は黙って太裳を見つめた。 太裳は何も言わない。しばし無言の時が流れた。 「支えが必要なのでしょうね。には私たちのような者が」 「その意見には賛成できますが、あなたはいらないと思いますよ」 「おや、失礼な。私はあなたこそいらないと思いますよ」 二人はニコッと笑った。 そしてまた対決ははじまるのである。 イタリアンレストランでは溜息をついた。 「どうした、」 目の前の紅蓮がパスタを食べる手をとめてを見る。 「これ」 は紅蓮に式神を渡した。そこから聞こえてきた会話に紅蓮は笑いをこぼす。 「いいことじゃないか」 「結局仲良くなってないわ」 「、そろそろ認めたら?」 「なにを」 「どちらのことも好きだって」 昌浩の言葉には黙ってアイスティーを飲んだ。 「守ってもらいたいんでしょう?」 の怒りが臨界点を突破した。 突如店に落ちた雷に紅蓮と宵藍は溜息をついたのであった。
静蘭vs太裳でした なんだか新鮮! とっても楽しかったです(オチないけどね) 燈織様、リクありがとうございました!