想う事の代償
〜愛してるさぁ〜」
「安心しろ、俺は愛してない」
「ひどいさぁ」

俺の先輩であるはユウと同じ日本人で、かっこよくて、強かった。
俺は別にの時々見せる表情が悪魔めいてるとかで好きになったわけじゃない。
いや、ちょっとはそれもあるか・・・
でも一番の理由は

「ラビ、着いてくんなよ。鬱陶しい。または五月蝿い」
「ひどいさぁ」
「ラビ今何月だか知ってるか?」
「えっ五月さ?」
「日本じゃ、"うるさい"ってのは五月に蝿を書くんだよ」
「えっつまり俺は蝿さ?!」
「何を今更」

は小さく溜息をついて、歩き出す。
俺はそのあとを追った。
は時々すごく悲しそうな笑みを見せた。
泣きそうになる一歩手前の。でもは絶対に涙を見せなかった。

「」
「なんだ、ちっこいの」
「ちっこ・・・・・!俺はちっこくないさ!前に会った時よりも背だって伸びたし」

は足を止めて俺を振り向く。
数年前、が長期任務に着く前もこうやって向き合った。
あの時は俺もまだよりも身長は低かった。

「そういうことは俺を抜かしてから言え」

いくら身長が伸びたとはいえ、も高いものだった。
は憮然としている俺の額に軽い指弾を食らわすと笑った。

「頑張ってるらしいな」
「もちろんさっ早くジジイのもとから離れてと一緒にいたいんさ」
「そっか。まぁせいぜい頑張るこったな、ちっこいの」

はそう言ってバイバイと手を振りながら自室へと戻って行く。
久し振りに出会ったのだから、もう少し相手をしてほしかった。

「くっそぉ・・・・・・・あいかわらずはぁ〜〜〜〜〜」
「ラビ、またやってるんですか」
「アホがいるぜ」
「ユウ、アレン・・・・」
「俺のファーストネームを言うんじゃねぇ」
「カンダ、落ち着いてください」

背後の仲間たち、アレン・ウォーカーと神田ユウの恋人たちがやってきた。
正直言って

邪魔である。

「なんの用さ」
「が帰ってきたって聞いたから会いに来たんですが・・・・」
「いないな」
「なら部屋に戻ったさ・・・・」
「また告白は無視されたんですか」

アレンの言葉にラビはショックを受けてしまう。確かに簡単にあしらわれてしまった。
に相手にもされていない。
溜息をついたラビの耳に悲鳴が聞こえてきた。アレンと神田が走り出す。
ラビも一瞬遅れて走り出した。

「どうしたんさ!」
「ラッ、ラビ、アレンくん、神田さん・・・」

一人の科学班が振るえていた。その前にはドアが開きっぱなしの部屋。

「なにがあったんさ!」
「ノッ、ノア・・・・・・さんが・・・・」

サッとラビの顔が青ざめた。科学班を放っておき、部屋の中をのぞいたラビは瞠目した。

「・・・・」

部屋の中央にが立っていた。
その足元には部屋の主と思わしき物体のパーツと、血だまりの中に立ったの姿がある。
が振り向いた。

「ラビ・・・・・なんだ、アレンに神田も。来てたのか」

はクスッと笑った。
手に真っ赤な血がついている。その手を持ち上げ、は赤い舌を出してちろりと舐めあげた。

「まぁちょうどいい。エクソシストも殺せば千年公も喜ぶ」
「千年・・・・・公だとっ」
「そう・・・・・俺はノアの一族が一人、時雨」
「嘘・・・・だ」
「俺の能力はこれ」

の手が空中にかざされると同時に、その場にいたものたちの体が地面に沈んだ。

「なっ・・・・・」
「重力。俺はものにかかるすべての重力を軽くしたり重くしたりできる」

はニコッと笑った。
ラビは重力に逆らって顔をあげる。ミシミシッと音がしていた。

「・・・・」
「ラビ、ちっこいの。だからお前はちっこいのって言われるんだ。浅はかなんだよ」

の顔をした別のものは言う。
は背後をむくと微笑んだ。突如として扉が現れ、一人の少女が姿を見せる。

「、終った?」
「ちょうどな。ロードも終ったな」
「もちろん。ほらぁ、早く帰ろうよぉ」

少女は甘えるようにの首にしがみつく。は苦笑して少女の頭を撫でた。

「じゃぁな、ラビ」
「、どこに行くさ」
「どこってHOME。俺の本当のいるべき場所」

はラビに近づいてきた。少女はその様子を見ている。
はラビの髪に触れ、そっと耳元で言った。

「お前はばかだよ、ラビ」
「・・・・・」
「俺なんか、好きになる必要はなかったのに」

はそう言うと少女とともに扉のうちに消えていった。
の姿が消えると同時にかかっていた重力も消えた。

「・・・・・・」

呆然としていた俺はそれからしばらく動けなかった。


想いは伝わらなくてもそばにいてくれると思ったのに・・・・・


「ラビ君、今回の任務内容はわかってるね」
「裏切り者時雨の抹殺さ?」
「君にとっては辛いかもしれない」

コムイはそう言って俺に任務を申し付けた。
辛くはない。
これは自分自身に与えられた代償なのだから。
想う事を許されていなかった相手に俺が恋焦がれた、その代償。
これは、






想う事の代償