第十三話

「おや、ゴウ。あなたが物思いにふけるなんて珍しいですね」
「ユウラか・・・・」
「・・・・どうしました。修行の調子が悪いとか、ガイに隠していたプリンを食べられたとか・・・」
「・・・・・・」
「ゴウ?」

ゴウの様子はおかしい。
修行の成果が出なく、プリンを食べられたのでもないのなら、いったいなんだというのだろう。

「ユウラ、人と天使は結ばれてはいけないのか」
「それは・・・・・さして、問題ないかと」

ユウラは少しだけくちごもった。
ルシファーは人の女との間にキラとマヤをもうけている。そのことを考えれば、さして問題ないようには思える。

「ですが、ゴウ。私達天使と人の生きる時間はかなり違います。人を愛していつか傷つくのはあなたですよ」
「わかっている。わかってはいるんだが・・・・」
「・・・・・・まさか、ゴウ誰か、人を愛しましたか」

ゴウはユウラから顔をそらせる。言いたくないようだ。
ユウラとしてはゴウのためにも聞いておかなければならない。そのためには手段だって選びはしない。

「ゴウ、最近レイがプリンを作ってくれたんです。レイの腕は知っているでしょう?ほしくないですか、プリン」
「・・・・」
「かなり数が多いのですが、私一人では食べきれないのです」

ゴウはユウラを見た。ユウラは笑顔でゴウを見返す。
ゴウは溜息をついた。

「セラが・・・・・・気になって仕方ないんだ」
「セラが?」

確かによくよく考えてみれば、ゴウたちのそばにいる人間というのはセラぐらいしか思い浮かばない。
第一破滅の日以前に会った人のことは忘れているのだから、どう考えてみてもセラだ。

「それはそれは・・・」

なんと言っていいのかわからない。
セラとゴウだ。どこかちぐはぐな感じもしなくはないが、二人なら幸せになれると思う。
思うのだが・・・・・

「ゴウ・・・傷つくのはあなたとセラですよ。あなたは老いることはなくとも、セラは老いて行きます」

あなたは、耐えられますか?
あなたが老いないのを見て、セラが傷つかないとでも思っていますか?
ユウラの無言の言葉がゴウに突き刺さる。

「それじゃぁ、どうすればいいんだ・・・・・・・こんな、こんな想い・・・・」
「仕方ありませんね・・・・まったく、まってなさい、ゴウ」

ゴウが引き止める間も無く、ユウラは翼を広げその姿を消す。
あっけにとられたゴウだったが、ユウラに任せればよいだろうと思い、ゆっくりと目を閉じた。