第七話

ユウラは神官たちとともに聖霊祭の準備をしていた。
はじめはオドオドしていた神官たちは、他の天使と協力し合って働いている。
体力がないからすぐにへばってしまうだろうが・・・・

「ユウラ」
「おや、ユダにルカ。どうかしましたか」
「シンとレイは」
「別の用事を頼んであります」

ユウラは二人に笑みをむけた。

「時には私に会いに来てくれるとうれしいのですが」
「それはすまない」
「ユウラーっ」

ラキが手を振って走りよってくる。
その腕の中には竪琴があった。それを見たユダとルカは眼を見開く。

「ラキは竪琴ができるのか」
「意外だな」
「ひどいな」

ラキは笑った。

「暇してたんだ。そんな俺に聖霊祭でユウラと楽を奏でるようにと女神様が」
「なるほど。腕のほうはどうなんだ?」
「聞いてみるか?」

ラキは地にあぐらをかくと竪琴をかまえた。
軽く弦をはじき、音をあわせると旋律を爪弾き始める。
その音色にユウラも笛をあわせた。
作業をしていた天使たちは手を止め、二人の演奏に聞き惚れる。
だが、二人とも曲が乗ってきたところで止めてしまった。

「ユウラ・・・・」
「楽しみはあとにとっておくものですよ」

くすっと笑みをこぼしたユウラは作業の手を止めた天使を見た。

「さっ、続けて下さい」

ユウラの言葉に天使たちは作業を始める。
ユダとルカは笑んでいた。

「さすがだな」
「だろ?」

ユウラとラキは笑顔をむけあった。

「ラキ、シヴァは?」
「女神のそばにいる。聖霊祭にも出られるさ」
「よかった」

ユウラはほっとしたように微笑んだ。
大切そうに笛をしまい、ラキとユダ、ルカを見る。

「あなたたちもお手伝いして下さい」

ユウラにせかされて、三人は天使たちの中に入っていく。
ゴウの姿もあった。約束は守ってくれたようだ。

「平和な聖霊祭になるといいのですが・・」

ユウラはつぶやいて首を振った。不安が現実化してしまいそうだ。

「平和な聖霊祭であることを」

ユウラは笑みを浮かべると準備をするために歩き始めたのであった。