第四話
ユウラは部屋の戸がノックされたことに気がつき、ドアを開ける。
そこに立っていた二人の姿にユウラは笑顔を見せた。
「お待ちしていましたよ、ルカ、ユダ」
「久し振りだな、ユウラ」
「えぇ。さぁ、中に入ってください」
ユダとルカを室内に招き、ユウラはドアを閉める。
二人はそれぞれの定位置についた。
「そういえばさっきラキに会った」
「あぁ。なんだか不機嫌でな、大嫌いだといわれた」
「ラキが・・?」
「あぁ」
「なにか、迷惑をかけたのでしょうか・・・・・それだったら私が代わりに謝ります」
「いや、ユウラのせいじゃない。俺たちが気に触ることでもしてしまったのだろう」
ユウラが少し困ったような顔をしたときである。ドアの外から声が聞こえてきた。
「お入りなさい」
「失礼します。ユウラ様、お茶をお持ちしました」
入ってきたのは赤いティアラをつけた神官である。
ユウラは跪いた彼から茶器ののった盆を受け取る。
「レイ、お立ちなさい。私の友人を紹介しましょう」
レイという名の神官は立ち上がるとルカとユダを見た。
「右側の銀の髪の天使はルカ。左の天使はユダといいます。二人とも、彼はレイ。私の身の回りを世話してくれています」
ユウラはそう言うとレイをむいた。
「レイ、あと二つお茶を持ってきてはくれませんか。あと茶菓子も」
「かしこまりました」
レイはユウラにむかって一礼すると外に出て行く。
ユウラは盆を机の上に置き、また腰掛けた。
「いい子ですよ、レイは。そう、最近新しい神官も入ってきたのですが、シンと言ってとても勉強熱心ですよ」
「ユウラは神官の育成に熱心だな」
「おや、いけませんか。でも、これはゼウス様の望みですからね・・・」
ユウラは胸元に手を持っていった。
衣の隙間からのぞくのは、白い肌に刻まれた赤い傷跡である。
ユダはそれを見ると眉をひそめた。ユウラはそれに気がつきそっと笑む。
「ユダのせいではありませんよ。これは昔に受けた傷跡です」
「消さないのか?」
「私とある方を繋いでくれる大切な傷ですから」
ゆっくりとユウラの目がドアの外にむけられた。
「レイ、お入りなさい」
それでもドアが開かないため、ユウラは苦笑しながら立ち上がってドアを開ける。
外に真っ赤になったレイがいた。
「ルカとユダにお茶を注いではくれませんか。私はシンを連れてきますから」
「ぼくがですか?でも・・・」
「レイ、お願いします」
ユウラはそう言って室内にレイを入れるとユダとルカを見た。
「しばらく席を外します。すぐに戻ってくるので、待っていてくださいね」
ユウラはそう言って部屋を出るとある場所にむかって足を進めたのであった。