第三話
「ユウラ」
「ラキ、にユリ殿。どうかしましたか。あなた方がここに来るのは珍しいですね」
「ラキがユウラ様に会いたいと申すものですから」
「ユリ殿も大変ですね。ラキの面倒を見るのは辛くないですか?」
「正直言うと」
ユウラはくすっと笑ってラキを見た。ラキも笑ってうなずく。
ユウラは労わるような視線をユリに送った。
「これからもラキが迷惑をかけると思いますが、よろしくお願いしますね、ユリ。あなたならきっと彼をいい方向に導けると思いますから」
ユウラの言葉にユリは少し赤くなって、はい、と言った。
ユリはその後女神の神殿に戻ったが、ラキはユウラと話があるため残った。
「調子はどうだ?」
「まぁまぁですよ」
「辛くはないか」
「・・・・・はい。でも・・・・初めのころは後悔していました。本当にこれでよかったのか、と」
「・・・オレはお前を守りきれなかったことを悔いているんだ。お前の翼を六枚失わせて・・・」
「ラキのせいではありませんよ」
ユウラはそっとラキの頬に手を当てた。
ラキは辛そうな瞳をユウラにむける。
「ラキ、私はあなたの体が心配です。私のために無理して天界に来たのでしょう?」
「俺たちはたった二人だけの兄弟だ・・・・お前を守るために、オレは当然のことをしたまでだ」
ユウラ悲しそうな瞳でラキを映すと頬に当てた手を離した。
そのまま顔を俯かせる。
「私は部屋に戻ります・・・・・すみません、ラキ・・・」
「ユウラ・・・」
ユウラは白い衣をひるがえし、神殿の中に姿を消した。
その背を見送っても動かないラキに背後から声がかかった。
「ユダ、ルカ・・・」
「どうした、ラキ。元気がないな」
「あぁ。いつものラキらしくない」
「・・・・・」
背後の友人たちは心配そうにラキに声をかける。
「あのさ・・おれ本当に後悔してるんだよ。なんで、あの時無理やりにでもユウラを止めなかったのかって」
「あの時?」
「・・・・・ずっと昔・・・・おれとユウラが罪を犯したときのことだよ」
"もう誰も喪いたくないんですっっ"
ユウラはそう叫んで自分の力を最高まで解放した。
六対の翼がユウラの背に現れた。
だが、ラキが見ている目の前で、ユウラの翼は六枚も無残に切り刻まれたのだ。
すべてを歪める代償として。
ラキも六枚ある翼のうち二枚を失った。それでも、まだ代償は大きかった。
「オレはお前たちが大嫌いだ・・・・何も知らない顔して、のうのうと生きていて・・・お前たちのことがオレは大嫌いだ」
ラキはそれを言うと二人をにらんで女神の神殿へと足を向けたのであった。