第十八話

ユウラは寝台の上で荒く息をついていた。ゼウスに呼び出されてからというもの、夜半すぎまで抱かれていたのだ。
さすがは大神というところであろうか。ユウラはぐったりと枕に顔をうずめていた。
腰がひりひりして立てない。大神の精力に辟易してしまう。

「ユウラ、腰は大丈夫か」
「立てないほどには大丈夫です」
「大丈夫ではなかろう」

背筋にゆっくりと唇が落ちてくる。

「あっ・・・・ゼウス様」

すでに何度も達してしまったというのに、また躯の奥から熱くなってくる。
ユウラはぎゅっと布をつかんで、必死で耐えた。

「もうしないから、安心しろ」
「ゼウス様」

ユウラの眼差しは、泣きそうにゼウスをにらみつけている。ゼウスは苦笑してユウラの頭に手を置いた。
優しげな眼差しである。ユウラは少しだけひょうしぬけた。ゼウスに仕えてこのかた、ゼウスの優しい表情というものを一切見たことがないのである。

「少し休むといい。またお越しに来よう」
「あの、ゼウス様・・・・」
「どうした」
「あの・・・・」

ユウラは真っ赤になってうつむく。ゼウスは出ようとしていた戸を閉め、ユウラが横たわる寝台に近寄ってきた。
寝台に二人分の重さがかかり、軽く沈む。

「どうした」
「・・・・・・・・・・」
「ユウラ、何か言わなければわからないぞ」
「・・・今宵だけは、おそばにいてください」
「お前の望むままに」

ユウラの隣にゼウスは横たわる。そしてユウラを腕の中にいれると目を閉じたのである。
ユウラは何故自分がそんなことを言ったのか理解できなかった。どうしても、その想いがルシファーに対する想いとは重ならなかったのだ。
ユウラはとめどない想いを胸のうちに抱えながら、ゆっくりと目を閉じた。

ラキは神殿から月を見上げていた。その左右に二人の天使が立っている。

「なんでいるんだ。お前たちを生み出したのは誰だ」
「我らを生み出したのは、最高の天使ユウラ。彼は肉体の一部を切り離し、我ら二人を作った」

ラキは渋い顔をする。最近の憔悴の理由がやっとわかったのだ。ユウラは他の天使と違う生まれである。
回復の仕方が他天使とは違っていた。ある場所に行くことによって回復できるのだ。この二人の天使を作ってから、その場所に行っていないのだろう。

「で、名は?」
「わが名はラファエル」
「わが名はミカエル」

二人の天使はそっくりな顔で微笑んだ。
ラキは溜息をつく。いや、つかざるをえないのだ。四大天使のうちの二人を自らの力によってユウラは生み出した。
恐らくその反動でしばらくの間眠ることになるだろう。

「ラファエル、ミカエル、ガブリエル、ルシファー・・・・・お前たちはそろいもそろって面倒なやつらだな」

ラキの言葉に二人は、また笑みを浮かべた。しかし、それはどこか歪んでもいたのであった。