第十五話

「ユウラ、"祝福"を与える天使には能力を与えることを考えている。どうだ?」
「良い考えだと思います」
「ユウラ、お前は誰が良いと思う?」
「・・・・・カサンドラ、パンドラの両名は神官の中でも上位に立ちます。力も弱くなく、与えるのはちょうどよいかと」
「・・・・・・レイとシンはどうだ?」
「二人に祝福を与えるのでございますか?」
「嫌か?」

ユウラは顔を伏せた。二人はユウラの付き人である。
絶対にゼウスの手にかけてなるものかと考えていたのだ。

「ゼウス様、どうか、二人だけはおやめください。二人は私の付き人、どうか・・・・・・」
「よかろう。ユウラがそういうのなら」
「ありがとうございます」

ユウラはそれからすぐにゼウスの前を辞した。今日はゴウやガイと会う約束をしたからだ。

「ユウラ」
「ゴウ、ガイ。よく来てくれましたね」

ユウラはちょうどやってきた二人を部屋の中に迎え入れる。
ユウラのそばにレイとシンがしたがっていた。

「紹介しますね、レイとシン。私の世話をしてくれている天使たちです。二人はゴウとガイ、私の昔からの友人です。ゴウ、ガイ、二人と仲良くしてあげてくださいね」
「わかってるさ、俺はゴウ。よろしくな」
「オレはガイ」
「レイといいます」
「シン、です」
「まだ、友人が二人ほど来るのです。レイ、シン、お茶の用意をお願いします」
「はい、ユウラ様」

二人はお茶の用意をしに部屋を出て行った。
ユウラはゴウとガイに向き直る。

「こうしてゆっくりと話をするのも久し振りですね」
「なぁなぁ、ユウラ、あと二人って誰?」
「ユダとルカです。ゴウとガイはまだ会っていませんでしたね」
「名だけなら聞いたことがある。相当腕が立つようだな」
「ゴウは気になるようですね」

ユウラはくすくすと笑った。ゴウは僅かに顔を赤らめてうなずく。

「そうですね、二人とも強いですよ。私も手合わせしてもらいたいと想ってはいるのですが、二人とも許可してくれなくて」
「ユウラも相当強いからな」
「そうでしょうか。ですが、私はゴウには負けますよ」
「そうか?」
「私は枝を木の幹に突き刺すことなんかできませんから」

ゴウはユウラの言葉にまた顔を赤らめた。ガイは興味深そうにユウラを見てくる。

「ラキに聞いたのですよ。ゴウは鍛練に集中すると周りが見えなくなりますからね」
「そうか?」
「えぇ」

ユウラがうなずくと同時に部屋の戸がノックされる。ユウラは立ち上がって、戸をあけた。二人の青年天使が立っている。

「ようこそ、さぁ入ってください」
「彼らは・・・?」
「彼らも私の友人です。レイとシンが戻ってきたら紹介しますよ」

二人の天使が部屋の中に入ってくる。ユウラはちょっと考えるようにしてから、ちょうどやってきたシンとレイに声をかけた。

「天気もいいですし、外に行きますか」
「・・・・・・はい」

ユウラの住む家は神殿内部にある中庭にあった。中庭にテーブルを出し、人数分の椅子を置いて彼らはお茶にした。

「ゴウとガイは初めてですね。私の友人でユダとルカです。ユダ、ルカ、ゴウとガイです」
「はじめまして。ユウラから話は聞いている。ゴウ、今度オレと手合わせをしてみないか?」
「あぁ」

ユダとゴウはそう話していた。

「レイ、今度一緒に空を飛ばないか?」
「えっあ、はい・・・・喜んで」
「このお菓子なんていうの?」
「それは私が作ったもので、名前はないんです。食べてみますか?」
「おう!」

微笑ましい限りである。ユウラは笑んで、お茶を一口飲んだ。
こんなに静かでゆったりとした気持ちになれるのは久し振りだった。ユウラは目の前で談笑する仲間達を見た。
少しだけ遅れてしまったが、これでやっといつもの生活に戻れたような、そんな気がしたのであった。