第十話

ユウラは寒さに僅かに身震いした。隣から腕が伸びてきてユウラを抱き締める。
その感触にユウラはうっとりと目を閉じた。ずっと前にも似たような感じの香りに包まれながら目を閉じたのだ。

「・・・様」
「ユウラ」
「・・・・・キラ?」

目の前にあるキラの顔にユウラは瞬きを繰り返した。そして昨夜のことを思い出し、やっとわれに返る。
キラは軽く苦笑して、ユウラを優しく抱きしめた。

「大丈夫か?」
「・・・・はい。そういえば、マヤは?昨日はここにきたときしか姿を見てませんが」
「あぁ、昨日はガイとゴウの家に遊びに行ったんだ。そのまま泊まってくると言っていたからな」
「そうだったんですか・・・・」

ユウラはふと視線をキラの瞳にあわせた。

「キラ・・少しの間だけ私のこと抱き締めていてもらえませんか?」
「どうした」
「寒くなってしまって・・・」
「あぁ」

キラは深くは聞かず、ユウラを抱き締めた。ユウラはそのぬくもりの中でまた眠りに落ちていく。
が、寝室の窓を何かが叩く音ではっと目を開けた。白い鳥が窓をつついている。

「いけない!」
「ユウラ?」
「すみません、キラ。レイからの急用です」

ユウラはそう言うと慌てて着替え始める。キラは起き上がると何かを取ってきた。
ユウラがキラのほうを見るとキラの手がユウラの耳に触れる。

「えっ・・・」
「じっとしていろ」

パチンとユウラの耳に何かがつけられる。ユウラがそれに触れた。飾り物のようだった。
ユウラはキラを見た。

「お前にやる。ほら、行かなくていいのか?」

突然のことに呆然としていたユウラはキラの言葉でわれに返って慌てて神殿に戻って行った。
キラは自分の手を見た。昨晩ずっと触れていた白く冷たい躯。
ずっと触れたいと願っていた体の印象とは違っていた。

「ユウラ・・・・」

お前はあの日から何を背負ってきたんだ・・・